川の夢

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川を渡った。

渡もいらないくらいの小川だったと思う。

橋の中ほどで下をのぞくと、

おびただしい数の鯉が、

水面で大口を開けたり閉めたりしていた。

餌を求めているようにも、

息を求めているようにも見えた。

 

反対の岸に着く前にもう一度

橋の下をのぞくと、

おびただしい数の鯨がいた。

(鯉じゃなかったのか)

気づいたときにはもう鯉は鯨で、

小川は大河だった。

 

いや、河でもないようだ。

右手を見ると煉瓦の古びた壁だった。

水は流れず、

自分は広漠とした水たまりの、

ちょうどその隅を渡っているようだ。

 

水たまりの水面で鯨がもがいている。

水面といってもその水面は

おびただしい数の鯨で

確認することが出来ない。

 

よく見ると鯨の数頭は流血していた。

喰いあっているようだ。

(鯨も鯨肉を喰うのか)

漠然と、そんなことを考えた。

なかなかめずらしい。

ぼくはとりあえず動画におさめた。

 

反対の岸に着いて水たまりを振り向くと

白いシャツを着た男が

水たまりの中に立っていた。

シャツは水を吸って

男の体にぴったりとまとわりついている。

岸には黒いスーツを着た男が数人で

白いシャツを見ていた。

黒いスーツたちは笑いながら白シャツを見ていて、白シャツは特に抗議するでもなく、ただじっと黒いスーツたちを見ていた。

(まるで何かの儀式みたいだな)

と、ぼくは思った。

 

またぼくは歩き出した。